Fossil Works

『神はためらう、この世の淵で』

 深夜とも夜明けともつかぬ、深い海の底を思わせる空の下に、克明に陰影をたたえた壮麗な廃墟。あるいは、この世の花と題された一連の作品における、セピア色の光の中で花開き、葉をそよがせ、茎を傾けている植物群。天久髙広の描く世界はいつも驚くほど細密を極め、この世においてこの世ならぬ場処の静寂とダイナミズムを告知してきた。

 その天久が、天使や悪魔、神話上の動物たちの化石を発掘し始めたのはいつ頃からなのだろう。死や滅びのさらに向こう側に遺された、天使の髑髏、悪魔の肋骨、一角獣の角…。神でさえ触れるのをためらう、それらの形象に向ける天久のまなざしは不思議な悼みと慈しみをたたえ、化石たちはこの世ならぬ明澄な光をおびてゆくのだ。

生野 毅

                                                   

2014年 日暮里HIGURE、2013年 銀座ギャラリー志門での展覧会より

                                                 

2012年、2010年、吉祥寺カフェ&ギャラリーPARADAでの展覧会より
2010年、日本橋ギャラリートモスでの展覧会より